Material Designとは、Googleが発表しているビジュアル、モーション、インタラクションのプラットフォームやデバイス間の包括的なガイドのことです。その中で取り扱われている様々な要素の取り扱い方、表現の仕方にMaterial Designは、現実世界の素材をメタファーとしたことでユーザにとってより分かりやすく、より直感的なデザインになっております。まさに視覚言語的といえるようなアニメーションが魅力で、動きによって従来されるはずの脳のイメージ補完をアニメーションが行ってくれるため、これらのデザインを用いることによってユーザーはそのサービスを利用していて疲れたり迷ったりしにくいといいます。これまでののっぺりとしたフラットデザインを脱し、僅かなシャドウや、ユーザーのイメージを助けるアニメーションなどを多用し、よりユーザーが扱いやすくなるようになっています。タイポグラフィは見やすく、グリッドを調整して、サーフェスを一新しました。
フラットデザインの主眼は、視覚的な混乱を取り除くことにありました。でもそのおかげで、例えるなら影のような、スクリーンを見やすく、操作しやすくするためのディテールも取り去られてしまいました。Material Designでは、ピクセルは色と深さを持っており、そのオブジェクトの操作によって影の幅が推移します。またリアルな光によって繋ぎ目を表現し、空間を分割し、動くパーツとして表現して、それ以外の無駄な装飾を省いています。
今年のGoogle I/OでAndroid Ware、Android Auto、Android TV等のプラットフォームの発表がありました。KeynoteでPichai氏はInternet of Things(モノのインターネット:家電や自動車等多種多様な「モノ」がインターネットにつながり、お互いに情報をやり取りすることで新しい価値を生み出すという概念)と掛けて、Android of Thingsと言っていて、身の回りのあまねくものにGoogleのプラットフォームを浸透させようとしています。そうなると、ユーザとのインタフェースになるデザインは今後さらに基盤になってくると考えられます。
ちっちゃな画面で膨大な情報を扱うAndroid Wearにも、車の運転に注意力の大半を持っていかれるAndroid Autoにも、OSでありブラウザでもChromeでも、ユーザが迷わないためにプラットフォームやデバイスを超えてデザインをする必要があります。各プラットフォームがバラバラにデザインされるとユーザが混乱してしまうので、Material Designという統一的なデザインガイドラインを定めて、ユーザは一つのコンテキストを知っているだけで操作できるようにしようとしているのだと思います。ガイドラインを読むとMaterial Designは、インタフェースはシンプルに、タイポグラフィはどのデバイスでも見やすく、クロスプラットフォーム・マルチデバイスを意識して設計されているという事が分かります。
Material Designの最も特徴的とも言えるのが、最近のトレンドであるフラットデザインを抑えつつも、人が物を理解しようとする仕組みに寄り添う様々な工夫が凝らされている点です。どうやれば、何が出来て、どうやれば元の画面に戻せるのか初めて使った人でも一発でわかるようになっており、また、
人は文字を読み、内容を理解しようとするだけでも脳の無駄なリソースを使ってしまうものなのですが、マテリアルデザインの場合、これは直感的にわかるようなピクトグラムアイコンによってメタファーされているため、そうした言語変換のリソースが全く必要ありません。また、そのピクトグラムアイコン自体も様々な動作によってアニメーション変化するため、その後どのような操作によって何が出来るのかについて素早く直感的に理解できるようになっているのです。それはまさにものに触れる時の感覚に近いといったほうがいいかもしれません。
マテリアルデザインの特徴的な部分は、ボタンの種類が多く、それぞれがどのような作用をもたらすのか明確化されていることです。また、ボタンをクリックした時のエフェクトもタッチディスプレイデバイスを意識した作りになっており、PCは勿論のことタブレット端末やスマートフォンなどから利用する際にも効率的に使えるようになっています。
現在Google関連のデバイスやアプリなどはほとんどこうしたマテリアルデザインが採用されていますが、それ以外にも歌ったり聞かせたりするだけで音楽検索が出来るShazamといった人気アプリもマテリアルデザインを実践しています。他にもWIPといった音楽再生アプリにおいても採用されています。